正法眼蔵行持⑤
kofukuji
足利 祥林山 高福寺
【原文】
現成これ生なり、生これ現成なり、その現成のとき、生の全現成にあらずといふことなし、死の全現成にあらずといふことなし。
ー 解説 ー
背比べ止め!
ある夜、私はフランス祖界の所を歩いた。すると、私の前の方をノッポとチビの二人のアメリカ人が歩いているんだな。一人はノッポ、一人はチビ。それでね、その時、ふっと自分のことを考えた――思った。「ノッポは、あれはとても自分より大きい。チビよりは私の方が大きいだろう」と、こう思った。
それでね、よせばいいのに、背くらべをしてやろうと思ってね、二人が歩いている後ろから追っかけて行った。何となく追っかけて行ってね、追い越す時に、並んで横目をひっかけて見た(笑)。するとね、後ろから見た時はチビだと思ったのが、私よりこれくらい大きいんです。私はね、そこでハッと思ったんですね。
正法眼蔵全機・都機を語る 武井哲應
現成という状態が起こって、そのあとに生という何かを感じるのではない。それは比較の世界の話。
比較を止めた、その先に残るもの。そこに焦点を当てて生きる。
そのために修行がある。
