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漢字検定一級

kofukuji

以前、永平寺での修行が終わって間もない頃、あるゲストハウスに泊まったときに、ある男性に声をかけられた。

「君はお坊さんかい」
「そうです。」
「どこの宗派だい?」
「曹洞宗です」

簡単な自己紹介をしたの後、いくつか会話したあとに「~寺って何宗なの?(お寺の名前は忘れました)」という質問してきたのだが、永平寺で修行してきたばかりで、曹洞宗のことですらままならない私には、他宗派のことは全くわからない。

「ちょっとわかりません。」

この私の回答の後に、男性の態度が急変し、わたしを責めだした。この方が言った言葉を正確に覚えていないが、「これだから坊さんは嫌だ」とか「思考停止」などと言われたのを記憶している。

当時は、無知な自分を恥ずかしく思い、また、一方的に責められることに対してくやしさを感じたが、今となっては、そんなこと(他宗派の知識)はどうでもいいと思っている。

なぜなら、坊さんはよりよく生きることを追求してるのであって、仏教に詳しくなることが目的ではないからだ。よりよく生きるために仏教を学ぶのであって、仏教に詳しくなるために仏教を学ぶのではない。

どれだけ仏教学に詳しくなろうが、不幸なんじゃ元も子もないであろう。

それは、漢字検定一級を持っているけど、コミュニケーションは苦手だというのと同じだ。漢字、つまり言葉は誰かに何かを伝えるためにあるのだから、漢字だけ覚えても致し方ないだろう。

お釈迦さんの弟子に、頭は悪かったが、掃除をしてさとった弟子がいる。
そういうことだ。

 

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