副住職日記

精霊馬は食べるべきか?

kofukuji

高福寺ではお盆飾りをお焚き上げしていることもあり、毎年多くのものがお寺に持ち込まれます。特にキュウリやナスで作られた精霊馬はたくさん見かけますが、これら食べ物を食べずにお寺に持ち込むことは果たして仏教的に正しいのでしょうか。

日本にはもったいない精神があるように、食べ物を大事にする習慣があります(昨今の現状はともかく)。しかし一方で、お供え物を食べるということに違和感を覚える方が多いのではないでしょうか。もちろん食べ物ですから、もったいない精神からすると食べるべきでしょうが、神様仏様に差し上げたものをわたしたち凡夫が手を出していいものかどうか。

以前永平寺で修行して間もなくのこと、毎朝仏様にお供えしているご飯が、そのままゴミ箱に捨ててあるのを指導役の方に見つかり、たいそう叱られたことがありました。永平寺で修行し始めの頃は大変お腹が空いており飢えていますので、食べられるものならお供え物でもなんでも食べたいところを我慢していた矢先の出来事だったので、我慢せずに食べてしまえばよかったと思ったのを覚えています。

しかし今のわたしの考えは、お供え物は食べずに野に撒いてもいいのではないかと思うのです。もちろん食べ物ですから、粗末にしてはいけないと思うのですが、それは「人間が食べない=粗末にする」という枠の中だけの話であって、もっと大きな枠で考えれば、野に撒いた食べ物は動物や虫が食べたり、微生物が分解したりして大自然に還ることでしょう。

お盆といえば、自分のご先祖様だけではなく、まったく関係のない人間や動物たちにも思いをはせる時期でもあります。そうであればなおのこと、どうしても自分が食べなければならないなんて固く思わずに、大自然にお裾分けする気持ちで野に還すことが、お盆の精神にも適うのではないでしょうか。

しかし現代ではなかなか野に還す環境が整っているわけではありませんので、その場合はお寺に持ってきていただければ、お盆飾りと一緒に供養させていただきたいと思います。

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