坊さんは悟るか悟らないかで寿命が変わる
心理的な苦痛が肉体的な病気につながることが明らかにされた。ふだんは精神活動を見事に制御している脳は、ずっと脅威にさらされ続けることによって過負荷となり、機能不全に陥る。
「自意識と創り出す思考」 ロバートフリッツ
ここで言う脅威は、急激に差し迫った危険である必要はなく、もっと控えめな実存的脅威だ。「自分はこうでなければならない」という理想と「自分は実はこうなのだ」という嫌な思い込みがあると、実存が脅かされる。
だそうだ。最近はそうでもないかもしれないが、坊さんというとなんだか清いイメージがあったり素晴らしい人格者だったりするイメージがあると思う。これは教師や医者にも当てはまるのかもしれないが、ときには聖職者だなんて呼ばれることもある。
世間がそんなたいそうなイメージを持っているものだから、誠実なお坊さんはその理想像に近づこうと必死に頑張るだろう。しかし、ロバートフリッツ氏が言うには「自分はこうでなければならない」という理想は身体にとって慢性的な脅威となる。
こうありたいという理想の裏には、実際はそうではないという自意識が隠れているという。そしてこれは作用反作用のごとく、片方に近づこうとすれば片方が強まるとのことだ。
そうであるならば、常に世間から聖人君主像を求められ、それに必死に答えようとする坊さんたちは非常にリスクにさらされているということになる。本当はなまけ者なで、そのことも自分自身よくわかっているのに、理想像で自分を覆ってしまうことに心当たりがある禅僧?!は少なくないだろう。
つまり坊さんはすぐにでも悟らなくてはならない。仏教の教えの根幹のひとつに諸法無我がある。諸法無我とは簡単に言えば、”変わらない自分”などないというものだ。”自分”などあやふやなものなのだから「自分はこうでなければならない」という問いは成立し得ないし、考えてもしょうがない。しかしこれは悟りの内容だ。悟ってなければわからない。だから一刻も早く悟らなければ、坊さんの寿命は縮まるばかりだ。急げ、世の坊さんたちよ。
副