副住職日記

センメルワイス反射

kofukuji

センメルワイスはブダベストへ移り、小さな病院の産科病棟で無給の名誉部長のポストを引き受けた。ここでも産褥熱が猛威を振るっていた。センメルワイスはすぐに手洗いを実施し、病気はほとんどなくなった。

新しいハンガリー人の同僚も同じ反応を示した。 彼らはこの方法を冷笑し、手を洗うことで病気の蔓延を防げるという馬鹿馬鹿しい認識を受け入れなかった。激しい批判が絶え間なく哀れな医師を傷つけた。

重いうつ病を患ったセンメルワイスは精神病院で死んだ。 先駆的な微生物学者たちが、人間の病気を起こすものは微生物であることを疑う余地なく証明し始めていたちょうどそのころに。

今日、旧来の通説やパラダイ厶に反する新しい知識への手のつけられない拒絶を、哲学者は「センメルワイス反射」と呼んでいる。

「土と内臓」より

なぜセンメルワイス反射のようなことが起こるのかというとそれはアイデンティティとか自己肯定感などと呼ばれる、自分を大事に思う気持ちが関係しているように感じる。

人間は他人より劣ることを極度に嫌がる。なぜなら自己の存在価値を他人と比較して決定付けているからだ。だから平均〇〇というものを知りたがる。平均年収、平均点、平均、、、平均より上なら自分はよくできた人間だし、平均より下ならダメ人間だ。

だからセンメルワイス反射のようなことが起こる。人は自分と反対の意見を受け入れたくない。なぜなら、自分と反対ということは、暗に自分は間違っていると言われているのと同じだからだ。

自分が間違っているということはそれは、自分は他人より劣っているということだ。そんなことは耐えられない。だから人間は自分と反対の意見を拒絶する。自分の価値を揺るがす大きな問題だからだ。

しかし、世の中は諸行無常だ。すべてのものは変化する。それは自分の頭の中のものにも該当する。そう思っていれば、自分が間違うことも当然あるだろうと、心に余裕がもてるはずだ。

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