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fugoan

 10年以上前であったと思うが、わたしが坊さんになる前のこと、あることに悩まされていた。その時に救いだったのが、とあるカフェでの時間。そのカフェは閑静な住宅街の中にあり、目の前には公園が広がっていた。なにかつらいことがあったり、心を落ち着かせたいときに、そこのカフェのテラス席で珈琲を飲みながら本を読んだり、公園で遊んでいる子どもたちをぼーっと眺める時間に、わたしはとても救われていた。

 しかし残念ながらそのカフェはもう営業されていない。なかなかそういうカフェに巡り合うことは稀であり、いまだに同じような場所を見つけることはできていない。

 そして、坊さんになってから気づいたのだが、そういった静かな場所で、珈琲を飲みながらぼーっとする時間が、なんだか坐禅をしているときの心境と似ていると思った。東京の蔵前にある蕪木という珈琲屋の店主が「魂の休まる場所」と表現していたが、わたしが感じたことと同じであろう。

 非常に慌ただしい現代の中で、坐禅のようになにもしない時間を作ることは、心身ともに大事なことだと感じている。そこで、より身近に、敷居が低く、坐禅のような体験ができる場所を作れないかと考えたときに思いついたのが、あのカフェのような空間をお寺に再現するということであった。

 坐禅とまではいかないが、珈琲を片手にぼーっとする。そんな場所を作りたい。当時のカフェと同じような空間になるかどうか、それは立ち寄った人にしかわからない。しかし少しでも、当時のわたしのような思いを抱えている人の心を軽くする場所を作ることができたら、坊さん冥利に尽きるというものである。

cafe不悟庵 Coming Soon

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